目次
1. 記憶とは
2.海馬と短期記憶
3.大脳皮質と長期記憶
4.作業記憶(ワーキングメモリー)とは
5.脳のパフォーマンスを向上させる方法
6.海馬の大きさを測り、記憶力の維持・向上に活かす
記事公開日:2025年4月18日
最新更新日:2025年4月18日
記憶とは、ものごとを忘れずに覚えていること・覚えておくことです。記憶には短期記憶・長期記憶・作業記憶などがあり、脳の様々な部位が動くことにより、私たちは記憶することができます。
記念日の大切な人との思い出も記憶の一部ですし、新しく覚えた言葉をすぐに忘れてしまうことも記憶の仕組みが関係しています。
本記事では短期記憶・長期記憶・作業記憶について詳しく解説していきます。
短期記憶とは、一時的に情報を保持する記憶のことです。
新しい情報はまず海馬に保存されますが、新しく覚えたことは、普段から使っていないと忘れてしまいます。これは、海馬が忘れてもよい情報と認識することで、人は忘れるとされています。
海馬は、記憶が定着する前に一時的に情報を保管する役割を担っており、短期記憶を長期記憶へと変換する重要な役割を果たしています。
長期記憶とは、長期間にわたって保持される記憶のことです。
短期記憶として海馬に保存された情報のうち、よく使う情報は大脳皮質に移動し、長期記憶として保存されます。
例えば、小学校の頃に習った九九を今でも覚えているのは、何度も繰り返し使うことで長期記憶として定着したからです。一方で、試験前に詰め込んだ暗記内容をすぐに忘れてしまうのは、長期記憶として定着しなかったためです。
長期記憶には、以下の2種類があります。
・陳述記憶(エピソード記憶・意味記憶):出来事や知識に関する記憶
・非陳述記憶(手続き記憶):技能や習慣に関する記憶
作業記憶はワーキングメモリーとも言われており、一度覚えたことを別の形でアウトプットできる記憶のことです。
例えば、電話で聞いて覚えたことをそのまま口に出すことではなく、「覚えて書ける」など別の形でアウトプットできることです。
短期記憶があってこその作業記憶ですので、海馬が重要になります。
海馬は記憶だけではなく、判断力・創造力等の「高次認知機能」にも影響を及ぼします。
なぜかというと、高次認知機能は、記憶が元になるからです。
このため、海馬が活性化すると、判断力・創造力等も維持・向上し得ると言えます。
海馬は、生活習慣の影響がその大きさの変化として現れます。
つまり、生活習慣を変えることで、その大きさを変えることができます。生活習慣の見直しにより海馬は神経が生まれ変わり(神経新生)、何歳になっても萎縮を抑えたり、大きくすることができます。
具体的には、以下のような生活習慣が海馬に良いとされています。
有酸素運動をすると、脳に流れる血液の量が増え、神経を成長させるBDNF(脳由来神経栄養因子)やIGF-1などの神経栄養因子が分泌され、海馬の神経の生まれ変わりを促進するとされています[※1]。
ランニングや水泳はもちろんですが、早歩きや階段などで普段の生活に無理なく有酸素運動を取り入れていくこともできます。
睡眠不足によってストレスが増えると、海馬の萎縮リスクが高まります。
睡眠を妨げる原因を取り除き、眠りやすい環境を整えることから始めてみましょう。
人の脳は、1日に消費するエネルギー量の20%を消費しています。
多くのエネルギーを必要とする脳に、糖質(ブドウ糖)以外の栄養素も供給することで、より脳の機能を維持することができます。
日本食や地中海料理は多品目で、栄養バランスが良いとされています。糖質、タンパク質、脂質といった三大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂取するなど、「食品摂取の多様性」を意識して食材選びをしましょう。
※関連記事:
脳にいい食べ物とは?海馬の萎縮を抑える食事のとり方を解説
ストレスが増えると、コルチゾールというストレスホルモンの一種の分泌が過多となり、海馬の萎縮リスクが高まり、海馬の神経の生まれ変わりも抑制されることが分かっています[※2]。
ストレスを感じることは自然なことなので、ストレスを発散する機会を定期的に作るなど、ストレスと上手く付き合っていくことが大切です。
東北大学加齢医学研究所の20年以上の研究成果に基づき、従来の脳ドックでは測定できなかった、健康なうちからの海馬の大きさをAIで測定できる検査が「BrainSuite(ブレインスイート)」です。
海馬は、記憶力や集中力等の認知機能の低下に先行して、20・30代より萎縮が始まります。しかし、小指程の大きさしかないため、これまでは健康なうちからの海馬の微細な萎縮度合いを測定することができませんでした。
上記のAI検査「BrainSuite」では、海馬の体積と共に、同性・同年齢との比較や、経年変化シミュレーションをレポート形式で確認することができます。
海馬の萎縮が進行しているか、あるいは萎縮を抑えることができているかを確認し、生活習慣を見直すことで海馬を育て、記憶力の維持・向上につなげていきましょう。
関連サイト:BrainSuite(ブレインスイート)公式サイト
記憶には、短期記憶・長期記憶・作業記憶などがあり、いずれも短期記憶がもとになっています。
このため、短期記憶が保存される海馬は、記憶をつかさどる重要な部位といえます。
判断力・創造力等の「高次認知機能」も記憶がもとになっており、海馬が活性化すると、この高次認知機能も、維持・向上し得るといえるでしょう。
海馬を育てることのできる生活習慣の見直しは、今日から始めることができます。ぜひ出来ることから始めてみてはいかがでしょうか。
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参考文献:
[※1] Erickson, Kirk I et al. “Exercise training increases size of hippocampus and improves memory.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America vol. 108,7 (2011): 3017-22. doi:10.1073/pnas.1015950108
[※2]Chattarji, Sumantra et al. “Neighborhood matters: divergent patterns of stress-induced plasticity across the brain.” Nature neuroscience vol. 18,10 (2015): 1364-75. doi:10.1038/nn.4115