Top / 知ることから / ダンス脳
ライフスタイルブレイキンからJ-POP・K-POP、社交ダンス、ラテン、フォークダンス、日本舞踊、盆踊り、ラジオ体操まで。ダンスには本当に様々なジャンルがあります。共通するのは、有酸素運動でありながら「頭を使う」「仲間と楽しむ」という要素を併せ持つこと。この組み合わせが、海馬にとって特別に良く働きます。
公開・更新
2025.01.30 公開 / 2026.08.23 更新
年齢を重ねると、海馬をはじめとする脳は萎縮していきます。ただし海馬は「神経新生」(神経の生まれ変わり)により、何歳になっても萎縮スピードを抑え、場合によっては大きくすることができます。
そして継続的な有酸素運動が、この神経新生の促進に効果的であることが近年明らかになってきました。ダンスは有酸素運動の一種ですが、通常の有酸素運動にはない効果を持っています[※1]。
体を動かして息が上がってくると、脳血流が上昇し、酸素と栄養素が脳に回ります。脳血流の上昇は脳の活性化につながります。
加えて、神経を成長させるBDNF(脳由来神経栄養因子)が血液中に分泌されはじめ、神経伝達が促進されるとともに、海馬の神経新生が促されます。これが有酸素運動が脳にもたらすメカニズムです。
踊っていると「リズムに合わせないと」「次はどういう動作だっけ」と頭を使います。シニア向けにダンスを教える指導者が「これからちょっと脳トレするよ」と言いながら振り付けをすることがあるほど、ダンスには脳トレの要素があります。
「脳トレ」と「運動」を組み合わせたデュアルタスク(複合作業)は、近年の大規模研究によりさらに脳に良い可能性があることがわかってきており、研究者の間で注目されています。
ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールは、海馬などの脳の萎縮要因の1つです。長期間その影響を受けると、海馬をはじめとする脳の神経細胞の萎縮を引き起こします。
一方、ダンスの「楽しい」というワクワク感や「もっと上達したい」という自己肯定感の高まりは、幸福感をもたらすホルモンであるセロトニンなどのレベルを高めます。ストレスの軽減がコルチゾールの発生を抑え、海馬を守ります。
仲間と楽しみながらポジティブな感情をいだくこと自体が脳への刺激になり、自然と「続けよう」という気持ちにもつながります。ダンスは認知症リスクの軽減や重症化予防にも役立つという研究もあります。
海馬は小指ほどの大きさで左右に一対ずつあります。とても小さく、健康なうちからの大きさは従来の脳ドックでは計測できませんでしたが、東北大学加齢医学研究所の20年以上の研究成果にもとづくAI解析により、MRI検査「BrainSuite」で測定できるようになりました。
ダンスは敷居が高いと思われがちですが、フィットネスクラブのグループレッスン、地域の公民館での集まり、自主的な愛好家サークルなど、挑戦する機会は探せばたくさんあります。孫と一緒に踊るためにダンスを習いに来る60代・70代の方も増えています。
Q. ジャンルは何でもよいですか
A. 有酸素運動になり、振り付けを覚え、楽しく続けられるものであれば構いません。
Q. 運動が苦手でもできますか
A. ラジオ体操や盆踊りも含め、強度の選択肢は幅広くあります。
Q. どのくらいの頻度で踊ればよいですか
A. 継続が前提です。無理なく続けられる頻度から始めてください。
Q. 一人で踊るのでは効果が下がりますか
A. 体を動かす効果と脳トレの効果は得られます。仲間と踊るとストレス軽減の効果が加わります。
[※1] Dancing and the Brain(Harvard Medical School)ほか
運動をして息が上がって良い感じになると、「BDNFが出てきて、海馬に栄養が回っているぞー」と思いながら、テンションを上げていきます。
私(40代・男性)は20代、30代を休みなくがむしゃらに(睡眠時間を削り、頻繁にストレスをため込みながら、時に大酒を飲み)働き、どんどん記憶力が低下していることを自覚していました。BrainSuiteを受けたところ、やはり海馬がかなり萎縮しており、自分の生活を見直すきっかけに。そこで長らく中断していたダンスを再開したところ、海馬が少し大きくなり、脳のキレも戻ってきました。これ以降、どんなに忙しくても、気分をリフレッシュでき海馬を育ててくれるダンスは続けています。
(執筆:「運動はからっきしだけど、J-POP・K-POPダンスから、ラテンや各国のフォークダンスを “ゆるく” 踊る」脳科学研究員)