脳の中で、自分の行動で大きさを変えられる部位は、ほとんどありません。海馬はその例外です。CogSmartは「脳からはじめるヘルスケア」をコンセプトに、海馬測定MRI検査「BrainSuite」と海馬育成アプリ「BrainUp」を提供しています。よく寄せられる5つの質問に、東北大学加齢医学研究所 教授・当社科学技術顧問の瀧靖之が答えます。
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人間の脳全体でみると、前頭前野、側頭葉と頭頂葉の間など、高次認知機能(判断力や創造力など)を担う領域が、他の領域よりも早くから萎縮が始まります。一方、運動野・感覚野・視覚野・聴覚野といった原始的な部位は、年齢を重ねても機能が維持されると言われています。
記憶をつかさどる海馬は20・30代から萎縮が始まりますが、その一方で、何歳になっても神経の生まれ変わり(神経新生)が起きる、脳の中でもとてもユニークな部位です。神経が生まれ変わることで、海馬の萎縮を抑えたり、大きくすることもできます。
海馬以外では側脳室領域でも神経新生が起きるとする研究がありますが、立証は難しく、立場が分かれるところです。
当社は前頭葉や側頭葉の萎縮度を評価する技術も保有していますが、BrainSuiteでは採用していません。これらの部位が生活習慣によって大きく変化するものではないためです。変えることができないことに対してレポートを出すよりも、生活習慣で大きさを変えられる海馬を測定・評価することが重要であり、誠実な検査であると考えています。
BrainSuiteは、海馬の体積を測ることで脳の健康状態を見える化するサービスです。海馬の過度な萎縮は結果的に将来の認知症リスクにもつながり得ますが、「今の脳の健康状態を見える化するサービス」とお考えいただくのが正しい理解です。
そして「変えることができる海馬」に着目することで、生活習慣を変えていくことにつなげられます。行動変容を起きやすくするためにも、健康なうちから受けることが重要です。
20・30代から海馬が萎縮するとはいえ、認知症はずっと先のことと思われる方も多いでしょう。強調したいのは、海馬は記憶をつかさどるだけでなく、高次認知機能にも影響し得るということです。判断力や創造力といった高次認知機能は、記憶が元になるからです。海馬に良い生活習慣は、脳のパフォーマンス向上につながります。
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その通りです。海馬に良い生活習慣として有酸素運動がありますが、有酸素運動をすると脳に流れる血液の量が増え、脳全体が変化する力(可塑性)が高まります。これにより、子どもでも大人でも脳内のネットワークが強くなり、様々な高次認知機能の獲得に有効だと言われています。子どもも「有酸素運動をすると成績が上がる」と言われています。
海馬の神経新生や機能の向上により、短期記憶力が高まります。短期記憶力が高まると作業記憶(ワーキングメモリー)の改善も期待できます。作業記憶とは、一度覚えたことを別の形でアウトプットする力です。電話で聞いたことをそのまま口に出すのではなく、「覚えて書ける」といった形です。短期記憶があってこその作業記憶ですから、ここでも海馬が要になります。
ほかにも、行動や思考を自分でコントロールしながら目標を達成するために必要な「実行機能」など、様々な脳機能の改善が期待できます。
一方、海馬の萎縮を促進する生活習慣は、過度なストレス、睡眠不足、肥満、過度な飲酒、喫煙です。いずれも動脈硬化リスクを高める要因になり得ます。動脈硬化につながる生活習慣は海馬だけでなく脳全体に良くありません。海馬は側頭葉に位置していますが、前頭葉にある前頭前野も動脈硬化で萎縮します。
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理由は3つあります。
有酸素運動は海馬に影響する力が大きい。この「影響する力」を効果量といいます。食事でいうと、不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸など)は海馬にプラスの影響があると言われていますが、効果量は有酸素運動のほうが大きいと言われています。
運動習慣がつきづらい方もいますが、「やる」という観点ではやりやすい習慣です。早歩きをする、エスカレーターではなく階段を使う。少しずつ始められることが多い。生活習慣の中でも、運動は習慣化しやすいと言えます。
運動をすると昼間の活動量が上がり、夜の睡眠の質の向上につながります。睡眠の質の向上は簡単ではないのですが、昼間に運動をして活動量を増やすことは特に良いと言われています。なお睡眠については、短時間睡眠は海馬に良くないため、ある程度の睡眠時間をとることも重要です。
認知症の要因は様々ですが、集約されやすいのは動脈硬化性の要因と鬱です。
動脈硬化や高血圧・糖尿病などに対して一番効果的な生活習慣の改善は、運動です。脳血管性認知症の大きな要因は動脈硬化ですが、アルツハイマー型認知症の大きな要因も、二型糖尿病を中心とする動脈硬化性の疾患です。この2つは認知症の中でも特に多く、どちらも動脈硬化が大きな要因ということは、生活習慣の影響を強く受けていると言えます。効果量の大きい運動を起点に生活習慣を改善していくことが重要です。
鬱も認知症の要因と言われますが、鬱のリスクを下げ、症状を改善するために一番良いものも運動と言われています。有酸素運動を起点として海馬に良い生活習慣を取り入れていくことは、鬱の観点からも将来的な認知症対策につながります。
興味深い研究があります。BrainUpの臨床研究において、運動習慣のない120名の方に半年間BrainUpを利用していただいたところ、海馬体積や認知機能に改善がみられたほか、糖尿病の主な指標であるHbA1c、高血圧の主な指標である収縮期血圧の数値についても、統計的に有意な改善が見られました。この内容は論文として発表しています。
論文:Beneficial Effects of a 26-Week Exercise Intervention Using IoT Devices on Cognitive Function and Health Indicators
海馬に良い生活習慣は脳だけでなく体全体にも良い。まさに当社のコンセプトである「脳からはじめるヘルスケア」と言える結果が出ています。
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BrainUpは行動変容理論に基づき、行動を変えやすいように設計しているアプリです。歩数アプリとは考え方が違います。
歩数アプリで促されるのはウォーキング・ランニングのみですので、好きな方や習慣のある方には良いのですが、そうでない方は続きません。BrainUpでは「子どもと遊ぶ」「農作業」「草むしり」「雪かき」「掃除全般」「床拭き」など、日常生活で楽しみながらできる運動、生活に取り入れやすい運動から始められます。その方に合わせて、行動変容しやすい運動習慣を提示します。
また、海馬体積を測って今の脳の健康状態を見える化するBrainSuiteと連携しています。BrainUpで行動変容し、BrainSuiteで海馬を測る。このエコシステムを一体で作り上げられることが違いです。ただ運動するだけでなく、その結果、脳がどう変わったのかが見えることが重要です。
東北大学 加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 教授/日本老年医学会代議員/東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センター センター長/株式会社CogSmart 科学技術顧問
平成5年 東北大学理学部卒業、同年 東北大学医学部入学。平成11年 東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程入学(平成15年3月修了)。平成15年4月 東北大学病院医員、平成16年 東北大学加齢医学研究所助手、平成19年 東北大学病院助教、平成20年 東北大学加齢医学研究所准教授、平成24年8月 東北大学東北メディカル・メガバンク機構 教授、平成25年8月より現職。平成29年4月より東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長。
学会賞6回、論文賞2回(平成20年 第44回医学放射線学会秋季大会・学術展示優秀賞金賞、平成21年 第68回日本医学放射線学会総会・学会賞金賞ほか)。専門は大規模脳MRIデータベースを用いた脳の発達、加齢に関する研究。
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