目次
シミやシワなど、肌が老化する仕組み
4か月の筋トレで皮膚は若返る!?
美肌に良い筋トレ方法(①ジムに通っている方向け)
美肌に良い筋トレ方法(②ジムに通っていない方向け)
筋トレで、肌を鍛える。脳も鍛える。
記事公開日:2024年3月1日
最新更新日:2024年8月14日
若い頃には外で陽を浴びて特別なケアをしなくても、ハリとツヤがあった肌。年齢を重ねるにつれてシミやシワが増えていき、鏡を見て若い頃を思い出す、ということは、多くの方が経験されることと思います。
このような肌の老化現象は、紫外線によって老化物質である活性酸素が蓄積したり、加齢に伴うDNA損傷によって生じる「細胞老化」により引き起こされると言われています*1。
「細胞老化」は、肌の細胞の不活性、肌のバリア効果の低下、免疫老化、炎症、ストレス反応の増加といった影響を及ぼすと言われています*2。特にコラーゲン繊維が豊富に含まれる結合組織で成り立つ真皮は、シワやハリといった肌年齢へ大きな影響を与えます*1。
肌を若々しい状態に保つためには、肌のケアといった日々の努力とともに、食事や運動といった健康的なライフスタイルを維持することが必要です*3。
特に、運動は細胞内のミトコンドリアの機能を調節して肌の老化を防いだり、炎症を抑制して肌の回復を促進することが報告されています*3。
肌の若返りを目指すには、生活習慣やライフスタイルが重要です。特に、筋トレが美肌と関係あることも、最新の研究で分かっています。最近では、女優の松嶋菜々子さんが美容のために筋トレを取り入れていることが話題になっていました。
※参考記事:
松嶋菜々子、50歳で105kgデッドリフト筋トレに驚きの声…始めたきかけは夫・反町隆史に「負けたくない!」
本記事では、「筋トレの美肌効果」に焦点をあてて説明していきます。
最新の研究から、筋トレが肌のアンチエイジングに効果があることが分かっています4。この研究は、週2回の筋トレを4か月行うことで、真皮の厚みに関わるバイグリカンという成分が増加し、皮膚の若返りにつながるというものです。
※この研究では皮膚の弾力性、真皮構造を評価することで肌の状態をみています。
この研究では有酸素運動も肌の状態を良好に保つことが示されていますが、肌に対する影響を有酸素運動と筋トレで比較してみると、筋トレの方が真皮の厚みを増加させるといった、より美肌効果を得られることが報告されています。
筋トレによる美肌効果を示した上記研究では、トレーニングマシンを使って以下のトレーニングを行っています。
レッグカール(ハムストリング:太ももの後ろ側の筋肉)
レッグエクステンション(大腿四頭筋:脚の前側の筋肉)
アームカール(上腕二頭筋:腕の力こぶ)
ローイング(広背筋:背中の筋肉)
ショルダープレス(三角筋:肩の筋肉)
チェストプレス(大胸筋:胸の筋肉)
この研究では、常に一定の強度でトレーニングするのではなく、筋肉や筋力の適応・成長に合わせて徐々に強度を上げていくようにメニューが組まれています。下半身と上半身の両方を鍛えるメニューを習慣的に行うことが、美肌につながるのでしょう。
まずは、以下を意識して取り組んでみましょう。
この研究の筋トレは、一般的なスポーツジムであればどこにでも置いてあるトレーニングマシンで行うことができます。ジムに行かれている方、これからジムに通おうとしている方は、ぜひトライしてみてください。
ジムに通っていない方は、まずは 自分の体重を利用した自重トレーニングを行ってましょう。
⚪︎脚のトレーニング(スクワット)
スクワットが手軽に行うことができて、お勧めです。膝が足のつま先より出ないようにお尻を少し後ろに突き出してしゃがむことで、脚の後ろの筋肉(ハムストリング)を鍛えることができます。
同じスクワットでも、膝がつま先の前に出るようして、お尻を地面につくくらい近づけるようにしゃがんでから立つ、という動作を繰り返せば、脚の前側の筋肉(大腿四頭筋)を刺激することができます。
⚪︎上腕のトレーニング
500mlのペットボトルに水を入れて持ち、力こぶを作るように肘を曲げて伸ばす動作を繰り返すことで、上腕の前側の筋肉(上腕二頭筋)を鍛えることができます。慣れてきたら、1Lや2Lのペットボトルに変えて強度を上げていきましょう。
⚪︎腕周りのトレーニング
腕立てを行うことで、肩の筋肉(三角筋)、胸の筋肉(大胸筋 )、腕の後ろ側の筋肉(上腕三頭筋)を鍛えることができます。腕立てをする際に、手幅を広くすれば大胸筋、手幅を狭くすれば三角筋や上腕三頭筋を鍛えることができます。
初めて腕立てをすると、腕が自分の体重を支えきれないかもしれません。その場合、両膝を地面につけた状態で腕立てをしても良いでしょう。
⚪︎背中のトレーニング
近くの公園の鉄棒や、家の中にぶら下がれるものがあれば、懸垂を行うと背中の筋肉を鍛えることができます。懸垂は比較的強度が高い種目なので、最初は鉄棒などにゴムバンドを巻きつけて足を通して行うと、ゴムバンドの力を利用して懸垂することができます。ゴムバンドの弾性を変えることで、懸垂の強度を調節することができます。
このように、工夫次第で手軽に筋トレはできます。ただ、自重だけでは強度調節に限界があります。自重に慣れてきたら、ダンベルを買ったりジムに通ったりして、重量を適切に管理したトレーニングをすることをお勧めします。
筋トレは筋肉を鍛えるだけにとどまらず、「肌を鍛える」といっても良いでしょう。
もちろん、筋トレの効果は筋肉や肌への影響にとどまらず、心身の健康や、脳機能の向上など多岐にわたります。
例えば、習慣的な筋トレによって記憶を司る脳の「海馬」という部位が大きくなることが分かっています*5。
また、筋力が高いことや筋肉量が多いことは、優れた脳の処理速度と関連していることも分かっています*6。
つまり、筋トレによって「脳」も鍛えることができると言えるでしょう。
筋肉だけはなく、美肌にも、そして心身の健康や脳機能にも良い筋トレ。
ぜひ、筋トレで体や脳とともに、肌を鍛えていきましょう!
参考文献
1. Shin SH, Lee YH, Rho N-K, Park KY. Skin aging from mechanisms to interventions: focusing on dermal aging. Frontiers in Physiology 2023; 14: 1195272.
2. Franco AC, Aveleira C, Cavadas C. Skin senescence: Mechanisms and impact on whole-body aging. Trends in Molecular Medicine 2022.
3. Karimi N. Approaches in line with human physiology to prevent skin aging. Frontiers in Physiology 2023; 14: 1279371.
4. Nishikori S, Yasuda J, Murata K et al. Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices. Scientific Reports. 2023; 13: 10214.
5. Kim YS, Shin SK, Hong SB, Kim HJ. The effects of strength exercise on hippocampus volume and functional fitness of older women. Experimental Gerontology 2017; 97: 22-28.
6. Baumgartner NW, Kao SC. Size or Strength? how components of muscle relate to behavioral and neuroelectric measures of executive function independent of aerobic fitness. Brain and Cognition 2024; 175: 106139.