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健康診断は、生活習慣病をはじめ、さまざまな病気の早期発見・早期治療はもちろん、体や脳の病気そのものを予防することを目的に行われています。
健康診断を毎年何となく受けている、という方も多いかもしれませんが、普段の生活習慣が体や脳に与える影響や、加齢と共に体に起きている変化が、健康診断の結果数値には出てきます。判定結果だけではなく、健康診断の結果数値を通して「体の中で何が起きているか」をよりしっかりと把握し、健康を維持するために生活習慣を整えることが大切です。
本記事では、健康診断の結果数値で特に見るべき、9のチェックポイントをご紹介します。
記事公開日:2024年6月17日 / 最終更新日:2024年12月4日
健康診断は、全身の健康状態を検査する目的で行われます。労働安全衛生法などの法律によって実施が義務付けられた「法定健診」(定期健診とも呼ばれます)と、個人が任意判断で受ける「任意健診」に分けられます。
そのほか、健康増進法に基づいて市区町村が実施する健診や、加入する健康保険組合が費用を補助する健診・人間ドックもあります。
健康診断と人間ドックに、明確な違いの定義はありません。一般的には、健康診断が生活習慣病の発見を主な目的としているのに対して、人間ドックは検査項目数が多く、がんやその他の疾患の発見にも有用とされています。
例えば全国健康保険協会(協会けんぽ)の「一般健診」では、年1回、診察や尿・血液の検査、胸部・胃部のレントゲン検査などの全般的な検査を行います。
また、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の方は「付加健診」として、一般健診に腹部超音波検査・眼底検査・肺機能検査・詳細な血液検査等を追加することができます。
このように、健診にオプションを加えて検査項目を増やし、病気の早期発見や生活習慣改善などの健康管理に活かすこともできます。
健康診断の結果数値としてまず確認することは、前回、つまり1年前の結果と比較した「経年変化」です。数値の変化は「体の変化」を表しています。
判定結果としては数値が基準内であっても、前回に比べて数値が悪化していないかどうかをチェックすることが大切で、特に、大きく変化している項目がないかをしっかり確認しましょう。
もし、大きく変化している項目があれば、生活習慣や加齢等の影響により、体に変化が起きている可能性が高いと考えられます。
1年前からの数値の変化と共に、基準値と自分の数値を比べてみましょう。
基準値とは、20〜60歳程度までの健康な人の検査データを統計学的に算出した数値のことで、判定に用いられます。データの分布から、上限側と下限側それぞれ2.5%を除いた中央の約95%が基準範囲とされます。分布が正規分布に近い項目では、平均値±1.96×標準偏差(SD)の範囲がこれに相当します。
つまり基準範囲は「健康と考えられる人の約95%が含まれる範囲」であり、健康な人であっても約20人に1人は基準範囲から外れる計算になります。基準範囲を外れることが、そのまま病気を意味するわけではありません。
検査後に異常があった場合、より精密な検査が必要となります。また、判定結果としては異常がなくても、数値が悪化している項目があれば、生活習慣を見直すことが、健康な体を維持するためには重要です。
健康診断の結果をどのように確認していけば良いかを、9のチェックポイントとして、3段階に分けて解説していきます。
基準値:18.5 以上 25 未満[※1]
BMIとは 体重と身長の比率を表す指標です。
影響 BMIが高いほど肥満の可能性が高くなり、生活習慣病リスクが高まると言われています。また、肥満や低体重の評価に用いられます。
基準値:男性 85cm 未満、女性 90cm 未満[※2]
腹囲とは へその高さで測る腰まわりの大きさです。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 基準値を超えると「内臓脂肪過多」の可能性があります。腹囲の大きさは内臓脂肪の多さを反映していると考えられていますが、個人差が大きく、腹囲が大きくても内臓脂肪は少ないことや、また、その逆もあります。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、上記基準値と共に、高血圧・高血糖・脂質代謝異常のうち2つ以上を確認できる状態を指します。つまり、腹囲が大きいだけでは、メタボリックシンドロームとはいいません。ほとんどの場合、自覚症状がなく、動脈硬化が静かに進みます。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の原因になります。
腹囲が基準値を超えている場合は、その他の血圧、血糖(HbA1cや空腹時血糖値)、中性脂肪やLDLコレステロールの値も確認しましょう。
基準値:空腹時 150mg/dL未満 / 随時 175mg/dL未満[※3]
中性脂肪とは 体を動かすための大切なエネルギー源の1つで、体脂肪にも含まれます。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 中性脂肪が多すぎると、動脈硬化が加速します。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の原因になることがあります。
基準値:120mg/dL未満[※4]
LDL(悪玉)コレステロールとは 肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割があります。コレステロールは、細胞やホルモン・胆汁酸の材料になりますが、増えすぎると、動脈硬化を進行させます。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 血中のLDLコレステロールが多くなると、吸収されきれずに血管の壁に沈着し、プラークと呼ばれるコブのようなものになります。そのため血管が狭くなり、動脈硬化を進行させます。
何かのはずみでプラークが破れると出血しますが、自覚症状がないまま進行することも少なくありません。プラークの破裂により血小板が集まり、血栓ができて、血栓が血液の流れを止めると、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。
基準値:AST 〜30 IU/L / ALT 〜30 IU/L / γ-GTP 〜50 IU/L[※5]
AST・ALT・γ-GTPとは ASTとALTは肝臓の細胞で作られる酵素で、臓器や筋肉などの体たんぱく質を構成するアミノ酸をつくります。
肝臓に何らかのダメージが加わって細胞が破壊されると、血液中にASTとALTが大量に放出され、ASTとALTの血中濃度が上昇します。このため、血液検査でASTとALT濃度が上昇しているときは、肝臓にダメージがあることが分かります。
また、γ-GTPはタンパク質を分解し、肝臓の解毒作用に関与する酵素の1つです。飲酒によりアルコール摂取量が多くなったり、胆道に何らかの疾患がある場合に、数値が高くなります。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 肝臓は「物を言わぬ臓器」とも言われており、痛みを発信する神経が臓器の表面にしかなく、自覚症状がないまま静かに悪化が進みます。むくみや黄疸などの症状が現れた時には手遅れとなることも少なくなく、肝硬変や肝がんのリスクが高まります。
基準値:血圧値の分類表を参照[※6]
血圧とは 心臓から送り出された血液が血管に与える力が「血圧」です。心臓が収縮したときに加わる力を「収縮期血圧」、心臓が拡張したときに加わる力を「拡張期血圧」といいます。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 高血圧は動脈硬化の原因のひとつで、高血圧の状態が続くと血管が傷付いたり、心臓に負担がかかり、動脈硬化や腎臓病等の発症につながることもあります。
高血圧は日本人に最も多い生活習慣病で、患者数は推定4,300万人とされており、成人の2人に1人は高血圧だと考えられます。血圧が高い状態が続いても自覚症状がないことが一般的ですが、合併症のリスクが高まると、動悸、息切れ、手足のむくみなどの症状が現れることがあります。
基準値:空腹時血糖値 〜99mg/dL / HbA1c 5.5%以下[※7]
血糖値とは 血液中のブドウ糖の濃度のことです。1日の中でも、食事などで血糖値は変動しますが、血糖値が下がらないまま高い状態が続くことを、高血糖といいます。糖の代謝を調節して血糖値を一定に保つ働きを持つインスリンが効きにくくなることで、高血糖となります。
健康診断では絶食後(食後10時間以上)に採血をするため、「空腹時血糖値」が結果として通知されます。
HbA1cとは 血液中のヘモグロビンのうち、糖と結合しているものの割合を測定した値です。検査前の食事の影響を受けにくく、過去1〜2か月の血糖値の状態を知ることができます。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 血糖値が多少高くても、基本的には症状はありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと、血液の粘度が高くなり、血管内をスムーズに流れにくくなります。
その結果、血管が詰まりやすくなったり、血液中のコレステロールを変化させたり、血小板を活性化させて血栓を作りやすくしたり、血管に関係する病気のリスクを高めることになります。血管の壁が傷付き、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の原因になります。
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。自覚症状として、「喉がとても渇く」「尿が多い」「手足のしびれ」「だるさ」などがあります。糖尿病は、動脈硬化を原因とする疾患の発症や死亡リスクを2〜3倍増加させることが分かっています。
基準値:2.1〜7.0mg/dL[※8]
尿酸とは 古い細胞が壊される際に生まれる「プリン体」という物質が、体内で分解されてできるのが尿酸です。主に腎臓から尿に混じって体外に排出されます。尿酸が血液に溜まりすぎていないかどうかを、尿酸値で確認します。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 尿酸値の高い状態が続くと、血液中で結晶を作り始め、関節などにたまり、炎症を引き起こします。その結果、痛風、腎機能障害や尿路結石などの原因になります。
尿たんぱく:15mg/dL以下[※9]
クレアチニン:男性 0.61〜1.04mg/dL / 女性 0.47〜0.79mg/dL[※10]
eGFR:60mL/分/1.73m²以上[※11]
腎機能とは 腎臓の主な働きは尿を作ることです。1日の尿量は約1.5リットル程ですが、腎臓の中では1日に約150リットルもの尿が作られており、不要なものだけを尿として排出しています。
体の状態に合わせて再吸収する量などを調節し、体内の環境を最適な状態に整えています。このように、血液中の老廃物や塩分を「ろ過」し、尿として身体の外に排出する働きをしているのが、糸球体です。
尿たんぱくとは たんぱく質は身体に必要な物質であるため、通常尿に混じることはありませんが、糸球体の働きが悪くなると、尿中にたんぱく質が漏れ出てくるようになります。
クレアチニンとは 体内の老廃物の1つで、腎機能が正常であれば血液中から取り除かれ、尿として体外へ排出されます。しかし、腎機能が低下すると、身体の外にクレアチニンが排出されず、血中濃度が高くなります。
eGFRとは 糸球体ろ過量を示す値で、糸球体が血液をどれだけろ過できているのかを示す値です。
基準値を超える原因 以下の項目などが関係していると考えられます。
影響 腎臓の機能が低下すると、老廃物を十分排出できなくなります。この結果、体内に不必要なものや、体にとって有害なものが溜まり、腎不全のリスクを高めます。
腎不全になると、カリウムが尿として排出されず、血中にカリウムが多くなります。カリウムの血中濃度が異常に高くなると、心臓が止まることもあり、注意が必要です。
生活習慣病とは、厚生労働省によると「食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称」とされています。日本人の死因の上位を占める、がん・心臓病・脳卒中は生活習慣病に含まれており、認知症も生活習慣病の1つと言われています。
生活習慣病の多くは自覚症状がないまま進行し、「沈黙の殺人者」「サイレント・キラー」と呼ばれることもあります。つまり、しっかりと健康診断の結果を確認することが、生活習慣病への対策として重要であると言えます。
また、体の健康診断だけではなく、認知機能の低下に先行して、20・30代より萎縮の始まる「海馬」の大きさをAIで計測できる検査もあります。海馬は神経の生まれ変わりによって、何歳になっても萎縮を抑え、大きくすることができることが分かっています。
生活習慣の見直しにより体も脳も健康にできる一方、生活習慣の悪化は、体だけではなく脳の萎縮にもつながることが分かっています。健康診断の結果を踏まえて予防行動につなげることが、体の健康にも、脳の健康にもつながります。
人生100年時代、健康診断で自分の健康状態を確認し、予防行動につなげていくことで、健康の不安を和らげ、より良い人生につなげていただければと思います。
出典