現代の忙しい生活の中では、ストレスは避けられないものです。今、仕事やプライベートのストレスを健康的に解消する方法として、「深呼吸」が注目されています。
本記事では、深呼吸の効果や、ストレス解消に繋げるための深呼吸法、そして、深呼吸が海馬の萎縮を抑えることができる理由について解説します。
目次
1.深呼吸の効果とは?
2.正しい深呼吸の方法
3.最新デバイスを使った深呼吸の質を高める方法
4.深呼吸と瞑想の組み合わせ
5.ストレスが脳に与える影響を確認するための方法
記事公開日:2024年9月26日
最新更新日:2024年9月26日
「深呼吸をして、すっきりした」という経験はありませんか?
実は深呼吸によりストレスが解消されるということが、世界中の研究で分かっています。
私たちの体には、興奮状態とリラックス状態を作り出す「副交感神経」があり、この副交感神経の活動が優位になると、人はリラックス状態になります。深呼吸を行うことで、副交感神経が刺激され、リラックス状態、つまり、心が落ち着いた状態になります[※1]。すると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制[※2]され、海馬の萎縮を抑えることにつながります。
深呼吸は、自らを落ち着いた状態に導くことができる有効な手段です。脳のパフォーマンスを最大限発揮するためにも、深呼吸を意識的に取り入れてみましょう。
ストレスが増えると、コルチゾールというストレスホルモンの分泌が過多となり、海馬の萎縮リスクが高まります[※3]。
海馬は、脳の中の記憶をつかさどる部位で、脳の老化に最も先行して30代より萎縮が始まります[※4]。海馬の萎縮が進むと、認知機能の低下[※5]や認知症のリスクが高まります。
一方、深呼吸によりコルチゾールの分泌を抑えると、海馬の萎縮リスクが低下し、脳を健康に保つことにつながります。
ストレス解消につながる「正しい深呼吸」の方法を実践してみましょう。
以下のステップに従った深呼吸を、1分間に4~6回できると良いでしょう。
1. 背筋を伸ばして座るか立つ。
2. 背筋を伸ばして、鼻からゆっくりと息を吸い込む。
3. 口からゆっくりと息を吐き出す。この時、腹部が凹むように意識する。
4. これを数回繰り返す。
深呼吸を習慣化するポイントをご紹介していきます。出来そうなものからぜひ、生活の一部に取り入れてみてください。
1. 毎日のルーチンに組み込む(決まった時間帯に行う)。
起床時や寝る前等、決まった時間帯に深呼吸を行ってみましょう。
特に、就寝前に深呼吸を行うと、副交感神経が優位になることで、体がリラックスした状態になり、寝付きが良くなると言われています。
2. リマインダーを設定する。
スマートフォンやスマートウォッチでリマインダーを設定し、深呼吸を忘れずに行うようにして習慣化することも良いでしょう。
「AppleWatch」には深呼吸の通知を促す機能があります。
また、Googleのスマートウォッチ「Fitbit」には、ストレスマネジメント機能としてストレスに関連する反応があった場合に通知を促す機能が付いています。
スポーツに関する機能が充実しているスマートウォッチ「ガーミン」では、ストレスレベルが高まった時に深呼吸をしてリラックスを促す「リラックスリマインダー」機能も付いています。
このようにスマートウォッチに内蔵されたセンサーから緊張状態を検知し、リラックス状態を生み出す深呼吸を通知するシステムを活用すると良いでしょう。
3. ストレスを感じた時に実践する。
仕事中やプライベートでストレスを感じた時に深呼吸を行うことで、リラックスすることができるでしょう。例えば、思うように仕事が進まない時や、作業ミスを繰り返してしまった時は、一度その場で立ち止まり、深い呼吸をしてみましょう。
焦りなどの緊張状態にある時、人は無意識に呼吸が浅くなることがあります。ストレスは無意識のうちに大きくなることも多いので、上記のようにスマートウォッチを活用することも有効な手段になるでしょう。
多くのスマートウォッチには深呼吸に関する機能が搭載されており、この機能を利用することで、正確な呼吸タイミングを把握しやすくなります。
深呼吸をした時の心拍数も記録されますので、深呼吸の前後の心拍数にも着目すると、自分の体の変化をより詳細に確認することができます。
このように、スマートウォッチを活用することで「呼吸の状態」についてフィードバックを受けられると共に、「深呼吸の効果」をより実感しやすくなります。
最近は、深呼吸を習慣化するためのデバイスも登場しています。
例えば、「ston s」というデバイスは、外気と一緒にゆっくり・深く吸い込むことで、蒸気が出にくくなるテクノロジーを搭載しており、深い呼吸の習慣化をサポートします。
「ston s」には、カフェインやGABAが配合されており、さまざまなフレーバーの味わいを楽しむこともできます。「呼吸を味わいリラックスする」ためにピッタリのツールといえるでしょう。
最近では、リラックス効果のある瞑想が注目されています。瞑想により、「今ここに」集中することができ、頭の中で煩雑となった思考の塊をほぐしてくれます。
瞑想と深呼吸の組み合わせは、ストレス解消やリラックス効果をさらに高めることができると言われています。瞑想時に深呼吸を取り入れることで、心を落ち着け、集中力を向上させることができます。また、深呼吸を行うことで副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られやすくなります。
海馬の大きさを測る脳MRI検査「BrainSuite」では、従来は計測できなかった健康なうちからの海馬の大きさを、東北大学加齢医学研究所の研究成果に基づいたAI画像解析技術により計測できます。
参考) 深呼吸がストレスを解消し、海馬の萎縮を抑えることができる理由とは
海馬は脳の老化に最も先行して30代から萎縮が始まる一方で、脳の中で唯一「神経新生」(神経の生まれ変わり)が起きる部位です。神経新生により、海馬の萎縮を抑えて、大きくすることもできると言われています。つまり、海馬の大きさを測ることで、脳の健康状態をみることができるのです。
海馬の神経新生は、ストレスが増えることで抑制されてしまいます。現在の生活のストレスが海馬に与えている影響を、海馬の大きさや同性・同年齢比較レポートより確認することができます。
※海馬の状態にはストレスの他、運動習慣や睡眠・食事などの生活習慣の影響があり、個人差があります。
深呼吸を生活習慣に取り入れることが、緊張状態にある心を落ち着かせるとともに、海馬の萎縮を抑え、心も体も健やかに保つことにつながるでしょう。
参考文献
[※1]Magnon, Valentin et al. “Benefits from one session of deep and slow breathing on vagal tone and anxiety in young and older adults.” Scientific reports vol. 11,1 19267. 29 Sep. 2021, doi:10.1038/s41598-021-98736-9
[※2]Perciavalle, Valentina et al. “The role of deep breathing on stress.” Neurological sciences : official journal of the Italian Neurological Society and of the Italian Society of Clinical Neurophysiology vol. 38,3 (2017): 451-458. doi:10.1007/s10072-016-2790-8
[※3] Chattarji, Sumantra et al. “Neighborhood matters: divergent patterns of stress-induced plasticity across the brain.” Nature neuroscience vol. 18,10 (2015): 1364-75. doi:10.1038/nn.4115
[※4] Raz, Naftali et al. “Regional brain changes in aging healthy adults: general trends, individual differences and modifiers.” Cerebral cortex (New York, N.Y. : 1991) vol. 15,11 (2005): 1676-89. doi:10.1093/cercor/bhi044
[※5] Kramer, Joel H et al. “Longitudinal MRI and cognitive change in healthy elderly.” Neuropsychology vol. 21,4 (2007): 412-8. doi:10.1037/0894-4105.21.4.412
[※6] Martorell, Anthony J et al. “Multi-sensory Gamma Stimulation Ameliorates Alzheimer's-Associated Pathology and Improves Cognition.” Cell vol. 177,2 (2019): 256-271.e22. doi:10.1016/j.cell.2019.02.014