脳ドックとは、脳ドック学会のウェブサイトによると「頭部MRI・MRA等を用いて脳に関係する疾患の診断や、疾患リスクの早期発見等を目的とする健康診断の一種」とされています。
「早期予防・早期発見」を目的としており、脳の状態を詳しく調べることができます。
本記事では、脳ドックで何が分かるのか、どのような病気や症状を発見できるのか、そしてコースやオプションの選び方について詳しく解説します。
目次
● 脳ドックで発見できる病気や症状
●脳ドックで分からないこと
●脳ドックのコースやオプションの選び方
● 脳ドックの検査機器とその特徴
●海馬の萎縮と脳の老化予防
記事公開日:2024年11月29日
最終更新日:2024年12月3日
脳ドックでは、脳梗塞・脳動脈瘤・脳腫瘍などの病気や症状を確認することができます。
脳梗塞は、脳の血流が一部または完全に遮断されることで発生します。脳梗塞を発症すると、脳内に血液が十分に送られず、脳細胞に必要な栄養分や酸素が行き渡らなくなり、運動麻痺や感覚障害、言語障害など様々な障害が起こります。
脳ドックでは、MRIやMRAを使用して脳内の血流や血管の状態を詳しく確認することができます。脳梗塞は早期発見が重要になりますが、無症候性脳梗塞と呼ばれる症状のない脳梗塞も発見することが可能です。
無症候性脳梗塞は、将来の脳梗塞や認知症のリスクを高めるため、早期発見と予防が重要と言えます。
脳動脈瘤は、脳内の血管の一部が膨らんでコブになる状態のことです。脳動脈瘤が破裂すると、脳出血を引き起こし、生命に危険を及ぼす可能性があります。
脳ドックでは、脳内の血管の形状や異常を詳細に観察し、脳動脈瘤の早期発見が可能です。
脳腫瘍は、脳に発生する異常な細胞の塊です。良性と悪性の両方がありますが、いずれも早期発見が重要です。
脳腫瘍の症状としては、慢性的な頭痛、吐き気や嘔吐、視神経の異常などがあります。悪性脳腫瘍の場合は、手足のマヒや言語障害、認知障害などの症状が見られ、末期の場合には意識障害で寝たきりになることがあります。
脳ドックでは、脳内の腫瘍の存在を確認し、腫瘍の大きさや位置を特定することができます。早期に発見された脳腫瘍は、治療の選択肢が広がります。
脳ドックでは、MRIとMRAで脳の状態を確認しますが、認知症と診断するには他の検査も合わせて行う必要があります。
病院・クリニックによっては、認知症診断のための検診コースを提供している施設もあります。
また、最近では、予防を目的として、30代以降の方を対象に健康なうちからの海馬の微細な萎縮度合いをAIで計測し、同性・同年齢と比較した脳の健康状態をレポートで確認できる脳ドックオプション「BrainSuite」(ブレインスイート)があります。
※参考記事:
海馬とは?!記憶をつかさどる脳の海馬について徹底解説
通常の脳ドックでは、脳の構造や血流の状態を詳細に観察し、疾病の有無を確認します。
しかし、それ以前からの変化や一時的な脳の不調、軽微な症状等を必ずしも確認できるわけではありません。例えば、ストレスや過労による頭痛やめまいなどは、脳ドックの検査結果に反映されないことがあります。
脳の健康には生活習慣が影響しますので、運動・食事・睡眠などの生活習慣を整え、ストレスを適度に発散していくことが、脳の健康につながります。
※参考記事:
認知症対策に。予防行動を意識した生活習慣で海馬の萎縮を抑える方法とは
脳ドックでは、大きな異常や構造変化を発見することはできますが、細かな神経の異常や微小な病変を見つけることは難しい時もあります。
場合によっては、神経内科の詳細な診断や追加の検査が必要になることもあります。
脳ドックの基本コースでは、MRIやMRAを使って脳の全体的な健康状態を評価します。これにより、脳の構造異常や血流の問題、脳梗塞や脳腫瘍の早期発見が可能です。
基本コースは、初めて脳ドックを受ける方や定期的な健康チェックを希望する方に適しています。
脳ドックには、基本コースに加えて様々なオプション検査があります。
例えば、脳血流の詳細な観察を行うためのCT検査や、脳の機能を評価するための脳波検査などがあります。これらのオプション検査は、個々の健康状態やリスク要因に合わせて選ぶことが重要です。
過去の病歴や家族歴に基づいて、医師と相談しながら選択することをお勧めします。
※参考記事:
脳ドックとは?受けた方がいいケース、検査内容と選び方を解説
脳ドックの費用は?助成金やふるさと納税の活用方法も含めて解説
脳ドックでは、検査機器としてMRI・MRA・CTを利用します。
それぞれの仕組みと違い、そして、どのようなケースで利用すると良いか、解説していきます。
MRI(磁気共鳴断層撮影)は、主に磁力を活用して脳の詳細な画像を取得する検査方法です。放射線を使用しない検査のため、被ばくすることはありません。
MRIでは、脳の構造や組織の状態を高い解像度で観察することができます。特に、脳梗塞や脳腫瘍など、細かな構造変化を捉えることができます。
オプションを付けることで、症状が出る前の、健康なうちからの海馬の萎縮度合いを測ることもできます。
所要時間は コースや施設により異なりますが、通常、頭部MRI検査で20〜30分程です。
※参考記事:
脳のMRI検査とは?MRAとの違いや注意点、選び方も含めて詳しく解説
MRA(脳血管撮影)は、MRI画像データから血管を描出し、脳内の血管の状態を確認できる検査方法です。
MRAでは、脳動脈瘤や血管の狭窄、血流の異常などを確認することできます。
CT(コンピュータ断層撮影)は、X線(放射線の一種)を使用して脳の断面画像を確認する検査方法です。
CTでは、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの異常を確認することができます。急性の脳出血の診断にも利用されます。
頭部CT検査の場合、所要時間はコースや施設により異なりますが、通常、5〜10分程です。
東北⼤学加齢医学研究所が開発したAI画像解析技術に基づき、健康なうちからの海馬の測定を可能にした検査が、「BrainSuite」(ブレインスイート)です。
自身の海馬の大きさと共に、同性・同年齢と比較した海馬占有率や、経年変化予測も確認することができます。
海馬は脳の老化に先行して20・30代より萎縮が始まる一方で、神経の生まれ変わりが発生し、何歳になっても生活習慣の見直し等によって萎縮を抑え、大きくすることもできる部位であることが分かっています。
BrainSuiteを脳ドックのオプションや単独検査として受診することで、自身の脳の健康状態を把握し、より早期からの予防行動・生活習慣改善につなげることができます。
脳の病気は自覚症状が出にくいからこそ、脳ドックで異常がないか、定期的に確認することが重要です。
早期に疾病やその前兆を発見することで、必要な対応や、早期予防行動をとれる可能性が高まります。