CogSmart(以下「当社」)では、「脳からはじめるヘルスケア」をコンセプトに、海馬測定MRI検査「BrainSuite(ブレインスイート)」や海馬育成アプリ「BrainUp(ブレインアップ)」を提供しています。
本記事では、東北大学加齢医学研究所
教授・当社代表の瀧 靖之(たき やすゆき)先生(以下「瀧教授」)に、BrainSuite・BrainUpに関する「よくあるご質問」について伺っていきます。
目次
1. 海馬に着目した理由
2. 海馬に良い生活習慣は、脳全体にも良い
3. 海馬に良い生活習慣として、有酸素運動に着目した理由
4. 海馬に良い生活習慣が「脳からはじめるヘルスケア」と言える理由
5. BrainUpの他のアプリとの違い
記事公開日:2025年3月26日
最新更新日:2025年3月26日
●質問
まず、海馬検査「BrainSuite」に関するよくある質問として「海馬だけを見ても分かることは限定的で、全脳を見る必要があるんじゃないですか?」というものがありますが、いかがでしょうか。
●瀧教授
人間の脳全体でみると、前頭前野、側頭葉と頭頂葉の間など、脳の中の高次認知機能(判断力や創造力等)を担う領域が、他の脳の領域よりも、早くから萎縮が始まります 。
一方で、運動野・感覚野・視覚野・聴覚野など、脳の中の原始的な部位は、年齢を重ねても機能が維持されると言われています。
記憶をつかさどる海馬は20・30代より萎縮が始まりますが、その一方で、何歳になっても神経の生まれ変わり(神経新生)が起きる、脳の中でもとてもユニークな部位です。
神経が生まれ変わることで、海馬の萎縮を抑えたり、大きくすることもできます。
海馬以外で、側脳室領域という部位でも神経新生が起きるとする研究もありますが、その立証は難しく、立場が分かれるところです。
海馬は生活習慣の影響がその大きさの変化として現れます。つまり、生活習慣を変えることで、その大きさを変えることができる、唯一と言っても良い部位です。
※関連記事:
海馬とは?!記憶をつかさどる脳の海馬について徹底解説
当社が保有する「前頭葉や側頭葉の萎縮度を評価する技術」をBrainSuiteで採用しなかった理由は、これらの部位が、生活習慣によって大きく変化するものではないためです。
「変えることができないこと」に対してレポートを出すよりも、生活習慣を変えることで大きさを変えることができる「海馬」を測定・評価することが重要であり、誠実な検査であると考えています。
BrainSuiteは、海馬の体積を測ることで、脳の健康状態を見える化するサービスです。
海馬の過度な萎縮は結果的に将来の認知症リスクにもつながりえますが、「今の脳の健康状態を見える化するサービス」とお考えいただくことが、正しいです。
つまり、BrainSuiteのレポートでは、健康なうちからの「脳の健康状態」を、海馬を通して知ることができます。
そして、「変えることができる海馬」に着目することで、「生活習慣を変えていく」ことにつなげることが出来ます。
生活習慣を変えることで、海馬や(海馬の機能である)認知機能の維持・向上が期待できます。「生活習慣を変えていく」、つまり「行動変容」を起きやすくするためにも、健康なうちからBrainSuiteを受ける、ということが重要です。
20・30代から海馬が萎縮するとはいえ、認知症はまだまだずっと先のことと思われる方も多いかと思います。
そこで強調したいことは、海馬は記憶をつかさどるだけではなく、高次認知機能にも影響を及ぼし得るということです。なぜかというと、判断力・創造力等の「高次認知機能」は、記憶が元になるからです。
海馬に良い生活習慣を送ることで、高次認知機能も維持・向上し得る、ということです。つまり、海馬に良い生活習慣が、脳のパフォーマンス向上につながる、と言えるでしょう。
※関連サイト:
BrainSuite公式サイト
●質問
「海馬に良い生活習慣は、海馬だけではなく、脳全体にとっても良い」と言えますか?
●瀧教授
その通りですね。海馬に良い生活習慣として有酸素運動がありますが、有酸素運動をすると、脳に流れる血液の量が増えますし、脳全体が変化する力(可塑性)が高まります。
これにより、子供でも大人でも脳内のネットワークが強くなり、様々な高次認知機能の獲得に有効である、と言われています。ちなみに、子供も「有酸素運動をすると成績が上がる」と言われています。
※関連記事:
「運動脳」で話題!運動で体と共に海馬も鍛えられる理由を解説
海馬の神経の生まれ変わり(神経新生)や機能の向上により、短期記憶力が高まります。
短期記憶力が高まることで「作業記憶」の改善も期待できます。作業記憶とはワーキングメモリーとも言われており、一度覚えたことを別の形でアウトプットします。例えば、電話で聞いて覚えたことをそのまま口に出すことではなく、「覚えて書ける」など別の形でアウトプットできることです。短期記憶があってこその作業記憶ですので、海馬が重要になります。
その他にも、行動や思考を自分でコントロールしながら、自分自身が立てた目標を達成するために必要な脳機能である「実行機能」など、海馬に良い生活習慣により様々な脳機能の改善が期待できます。
この一方で、海馬の萎縮を促進してしまう生活習慣としては、過度なストレス、睡眠不足、肥満、過度な飲酒、喫煙などがあります。いずれも動脈硬化リスクを高める要因となりえます。
動脈硬化につながる生活習慣は海馬だけではなく、脳全体にとっても良くありません。海馬は側頭葉に位置していますが、例えば、前頭葉にある前頭前野も動脈硬化で萎縮します。
以上のように、海馬に良い生活習慣は、「脳全体の変化する力(可塑性)を高める」という観点からも、「脳の海馬以外の部位の萎縮を抑える」という観点からも、脳全体にとって良い影響を与えると言えます。
●質問
海馬育成アプリ「BrainUp」では、海馬に良い生活習慣として「一定以上の心拍数を伴う有酸素運動の習慣化」ができますが、有酸素運動に着目したのはなぜでしょうか?
●瀧教授
有酸素運動は「海馬に影響する力が大きい」ということがまず1つ目の理由です。
この「影響する力」を「効果量」といいます。
2つ目の理由として、有酸素運動は「やりやすい」ということです。もちろん、なかなか運動習慣がつきづらいという方もいますが、「やる」という観点ではやりやすい習慣です。早歩きをする、エスカレータではなく階段を使う等、少しずつはじめられることも多いです。このため「生活習慣の中でも、運動は習慣化しやすい」と言えます。
※関連サイト:
BrainUp公式サイト
食事でいうと、不飽和脂肪酸(例えばオメガ3脂肪酸)は海馬にとってプラスの影響があると言われていますが、効果量(影響する力)は有酸素運動の方が大きいと言われています。
睡眠については、短時間睡眠は海馬に良くないと言われていますので、ある程度の睡眠時間を取ることも重要です。
運動は、他の生活習慣にも良い影響を与え、「生活習慣全体を見直す起点になりやすい」と言えます。例えば、運動をすると昼間の活動量が上昇し、夜の睡眠の質の向上につながります。
実は「睡眠の質の向上」というのは簡単ではないのですが、昼間に運動をすることで活動量を増やすことは、特に良いと言われています。
このように、効果量が大きく、やりやすい行動であり、かつ、生活習慣全体を見直す起点になりやすい、ということが、有酸素運動に着目した理由です。
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睡眠が海馬に与える影響は?睡眠の質の高め方と理想の睡眠時間も解説!
●質問
認知症に対して、海馬に良い生活習慣が予防行動になる理由とは何でしょうか?
●瀧教授
認知症の要因は様々ですが、集約されやすいのは動脈硬化性の要因、それから、鬱です。
(1)動脈硬化
まず、動脈硬化や高血圧・糖尿病などに対して一番効果的な生活習慣の改善は、運動です。
このため、運動は重要になります。
脳血管性認知症の大きな要因は動脈硬化ですが、アルツハイマー型認知症の大きな要因も、二型糖尿病を中心とする動脈硬化性の疾患です。 この「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」が、認知症の中でも特に多いと言われていますが、そのどちらも動脈硬化が大きな要因ということは、やはり生活習慣の影響を強く受けている、と言えます。
このため、特に効果量の大きい運動を起点に、生活習慣を改善していくことは重要だと言えるでしょう。
(2)鬱
鬱も認知症の要因と言われますが、鬱のリスクを下げたり、鬱症状を改善するために一番良いものも運動と言われており、「有酸素運動を起点として、海馬に良い生活習慣を取り入れていく」ということは、鬱の観点からも、将来的な認知症対策につながるといえるでしょう。
※関連記事:
認知症対策に。予防行動を意識した生活習慣で海馬の萎縮を抑える方法とは
●質問
「海馬に良い生活習慣は、脳だけではなく、体全体に対しても良い」と言えますか?
●瀧教授
ご質問にお答えする前に、ひとつ、興味深い研究をご紹介します。
「BrainUp」の臨床研究において、運動習慣のない120名の方にBrainUpを半年間利用していただいたところ、海馬体積や認知機能に改善がみられた他、糖尿病の主な指標である「HbA1c」という数値や、高血圧の主な指標である「収縮期の血圧」の数値についても、統計的に有意に改善が見られました。
この内容は論文としても発表しています。
論文:Beneficial Effects of a 26-Week Exercise InterventionUsing IoT Devices on Cognitive Function and Health Indicators
このように、「海馬」に良い生活習慣は脳だけではなく、体全体にも良いといえ、まさに当社のコンセプトである「脳からはじめるヘルスケア」と言える結果が出ています。
●質問
歩数アプリなど、他のヘルスケアアプリとの違いは何ですか?
●瀧教授
BrainUpは行動変容理論に基づき、行動を変えやすいように設計しているアプリです。
このため、歩数アプリとはそもそも考え方が違います。
歩数アプリで促されることはウォーキング・ランニングのみですので、好きな人やその習慣がある方には良いですが、そうではない方はなかなか続かない、ということがあるかと思います。
BrainUpでは「子供と遊ぶ」「農作業」「草むしり」「雪かき」「掃除全般」「床拭き」など、日常生活で楽しみながら出来る運動や、生活に取り入れやすい運動から始めることができ、その方に合わせて行動変容しやすい運動習慣を提示することができます。
また、海馬体積を測り、今の脳の健康状態を見える化できる「BrainSuite」検査と連携しているからこそ、BrainUpで行動変容し、BrainSuiteで海馬を測り、というエコシステムを一体的に作り上げることが可能です。
ただ運動するだけではなく、その結果、脳がどのように変わったのかが見えることが、重要です。
BrainSuiteではAIを用いて非常に多くのデータから、どのサービスよりも精度の高い海馬のレポートをお出しします。
そして、繰り返しになりますが、行動変容理論に基づいて作られたBrainUpと連携しているからこそ、脳の健康状態を見える化するだけではなく、その結果を行動に繋げることができます。このエコシステムを作っているのはCogSmartだけです。
ぜひ、みなさんも「脳からはじめるヘルスケア」を体験してみてください。
瀧 靖之
東北大学 加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 教授
日本老年医学会代議員
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センター センター長
株式会社CogSmart 代表取締役
略歴
平成5年 東北大学理学部卒業、同年に東北大学医学部入学
平成11年 東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程入学
平成15年3月修了
平成15年4月より東北大学病院医員
平成16年より東北大学加齢医学研究所助手
平成19年より東北大学病院助教
平成20年より東北大学加齢医学研究所准教授。
平成24年8月より東北大学東北メディカル・メガバンク機構 教授
平成25年8月より東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 教授
平成29年4月より東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長
平成20年に第44回医学放射線学会秋季大会・学術展示優秀賞金賞、平成21年に第68回日本医学放射線学会総会・学会賞金賞等、これまで学会賞6回、論文賞2回。
専門は大規模脳MRIデータベースを用いた脳の発達、加齢に関する研究。
本記事では、自社サービスについての情報を掲載していますが、できる限り客観的かつ公平な視点で記述することを心がけています。他の選択肢と比較し、ご自身に最適なサービスをお選びください。